「楽天力 ―― 上手なトシの重ね方 ―― 」
清流出版
- 総頁数:233頁
- 判型:B6判
- 発行年月:2009/07/09
- ISBN978-4-86029-298-0
- 定価 1680円(本体 1600円 + 税5%)
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誰もが年を取るが、その老い方はさまざま。ボケ老人、徘徊老人、老々介護、近親者の死……年を取れば、悲しい現実に直面することも多くなる。しかし、人間は生きていかなければならない。どうせ生きるなら輝いて生きたいもの。著者は年を重ねるにしたがって益々輝きを増し、明るくしなやかに生きる元気印の人たちの、年を重ねるための知恵を公開する。「楽天力」は、正にそんな生き方を象徴する言葉でもある。
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第1章
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元気シニアの生き方模様
(大晩年への出発/小さな幸せを大地に) |
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第2章
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晩年を生きるこころ模様
(いくつになってもロマン/老いに個性あり、笑いあり) |
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第3章
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泣いて笑って今どき介護模様
(介護を乗り越える愛/介護する人の心に寄り添う) |
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終章
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人生模様の総仕上げ─わたし色あなた色
(人生百年の計、美しい願望を!/わたしの旅支度、一振りのコロンを) |
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あとがき ・・・楽天力って?・・・
この本では、三つの章と終章の冒頭に、かつて読んだ本の中から、胸に響いた一文を引用させていただいております。私の未熟な思考に方向づけを与え、不足を補ってくれるものばかり、その言葉の美しさ、思想の深さに導かれて各章が成り立っています。
このあとがきにも、引用を一つ加えたいと思います。茨木のり子さんの詩集『倚りかからず』から、「笑う能力」の冒頭の部分を。
「先生 お元気ですか
我が家の姉もそろそろ色づいてまいりました」
他家の姉が色づいたとて知ったことか
手紙を受け取った教授は
柿の書き間違いと気づくまで何秒くらいかかったか
茨木さんといえば、厳しい視線で人間の自侍の精神や社会のありようを謳った人です。そんな彼女が“笑う能力”が大事、「いまわのきわまで保つように」と述べ、最後にはこう書いています。
気がつけば いつのまにか
我が膝までが笑うようになっていた
ちょうど筋トレ体操で膝を痛めていた私、この諧謔性に笑い転げ、笑う能力のある自分に満足し、私もまだ大丈夫かしらなどと安心したものでした。
この本はつつましく人生を生きている方々の折々のエピソードを、“模様”というくくりの中で描いたものです。高齢期を元気に生きていくための“生き方模様”(一章)、少し弱まりが出てきた頃の“こころ模様”(二章)、さまざまな介護場面での“介護模様”(三章)、そして終章の“人生模様の総仕上げ・わたし色あなた色”と、生きる上での綾なす模様、心意気を取り上げています。家族の病や自分自身の病をかかえ、厳しい生活を生きている方々ですが、どの方も突き抜けたような明るい人生観を持っています。冒頭のミルク壷に落ちた楽天カエルのように、頑張ってみようと意欲的です。
「くよくよしだしたら、自分でストップをかけよう。思ってもしょうがないことは思うなと命令しよう。気持ち次第なのよ」と。
確かに老いていくことは淋しいし、じりじりしてくる焦燥感や不安感で胸が苦しくなります。悲観的にもなってきます。先へ先へと考えて、取り越し苦労ばかりしてしまいます。
そんな時、「何バカなこと考えているのよ」と我が心を元気づけ、胆(はら)を据え、顔を空に向けて笑う。心を明るい方へコントロールさせる意志の力、これがこの本でいうところの“楽天力”です。現実は変わらなくても笑うことや意識をちょっと変えることで気持ちが楽になる、今、この不況の時代、生き難い時代だからこそ、“楽天力”が必要になると思います。計画は立てる、しかし大体のところで結構、くよくよするなと。
この本はそういう“楽天力”を磨くことで、日々を明るく生きていこうよという提案です。この思いが皆様に届きますように。
本書の出版には、清流出版社長加度賀屋陽一様、編集部の古満温様のお世話になりました。明るくて華やかな表紙を書いてくださった石川哲司様、推薦文を書いてくださった蒲田寛先生、多くの方々に、感謝申し上げます。
ともすれば気持ちが沈みがちになる日に、この本が一服の清涼剤になれば幸いです。
平成二十一年 山笑ふ日の午後に
沖藤 典子
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